「好きなことで生きていく」に疲れた人へ。「事務」で人生を仕組み化する知恵
「好きなことを仕事にする」という理想と現実の狭間で悩む全ての人へ。事務という意外な切り口から、新しい働き方のヒントを提案する『生きのびるための事務』をご紹介。夢と生活の両立に悩む方に、具体的な道筋を示す一冊。
こんにちは。のりーです。
「好きなことで生きていく」
そう口にするのは簡単です。
でも、この言葉、ちょっとプレッシャーに感じませんか?
いざ踏みだそうとすると、家族の反対、収入の不安、スキルのこと…現実が立ちはだかります。何より、「本当にやっていけるの?」という自分との果てしない対話。
理想と現実の間の埋め方は、誰も教えてくれません。
今日は、そんなモヤモヤに対する答えのひとつを見つけた気がする本を紹介します。意外にも、それは「事務」という地味な切り口から、私たちの働き方を問い直すマンガでした。
✨️Book Pick:『生きのびるための事務』

「事務」で人生を楽しくする?
「事務」と聞くと、経理や書類作成といった地味な作業を想像しますよね。
でも、このマンガで語られる「事務」は違います。
それは、好きなことを続けていくための方法論であり、しなやかに生き抜くための知恵そのもの。
「才能がない」と思い込む人の固定観念を、マンガならではの展開で優しく解きほぐしてくれます。「才能とは、いつまでも楽しく好きなことを続けられること」という定義には、思わず肩の力が抜けました。
「自分」ではなく「やり方」を疑う
この本が素晴らしいのは、理念的な話で終わらないところです。
たとえば、24時間の使い方を円グラフにする演習。私もやってみました。
自分のことは自分が一番わかってる、なんて思っていたら大間違い。頭でなんとなく思うのと、実際に手を動かして「見える化」するのとでは、発見がまったく違いました。
面白いことに、「理想の1日を描いてみて」と言われても、私は今の1日がそれほど嫌じゃないことに気づいたんです。
実は私、「仕事にしたいと思えるほど好きなことがない」のが、ずっとコンプレックスでした。
でも、私にとって大事なのは、朝、挽きたての豆で淹れた珈琲を飲む時間。運動する時間。夜8時間しっかり眠ること。家族と朝夕のごはんを食べること。
それさえ満たせれば、「好きなこと」に固執しなくてもいいんじゃないか、と思えたんです。
自己否定はダメ、かといって無理に自己肯定もしなくていい。
『生きのびるための事務』坂口恭平著
著者のこの主張が、ストンと腑に落ちました。問題があるのは「自分」ではなく「やり方」。行き詰まりを感じているなら、まずはそこを疑ってみる視点は、まさに目からウロコでした。
「好き」と「仕事」のリアル
さらに衝撃だったのが、運慶やピカソといった芸術家たちも、「自分の好きなこと」だけをやっていたわけじゃない、という事実。
彼らもちゃんと法人(組合)をつくり、他人の需要に応える「仕事」をしていた、と。
そりゃ、そうだよな、と。
私たちはどこかで「自分の好きだけを貫いて評価されるのが本物だ」と思い込んでいたフシがあります。でも、実際はそうじゃなかった。
やるべきことを淡々と、息をするように続ける。そのために「仕組み化」する。
そうして生まれた余裕で、自分が熱量を傾けられることに時間やエネルギーを割いていく。順番は、そっちだったんですね。
「事務」は、日常を守る道具
この本の最大の魅力は、「事務は冒険のための道具である」という新しい視点です。
でもそれは、大きな夢を追うためだけじゃありません。
私のように「3食忘れるほどの好きなことがない」人間にとっては、「ささやかな好き」で満たされた日常を守るための道具でもあるんだと思います。
さしておもしろくない作業を仕組み化して、嫌だと感じるストレスを減らす。当たり前のことをちゃんとやれる環境を整える。
「好きなことで生きていく」という大きな看板に圧倒されなくても、事務的な方法を味方につければ、もっとワクワクする(=ストレスが少なく、機嫌よくいられる)人生は、自分で作っていけるのかもしれません。
「できることだけやればいい」という著者の言葉が、そっと背中を押してくれます。
夢と現実の狭間で悩んでいる人も、「好きなこと」が見つからなくて焦っている人も。
「やりたいこと」と「生きのびること」の自分なりのバランスを見つけたいすべての人に、おすすめしたい一冊です。
次号もお楽しみに!
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