あなたを縛る価値観の正体は? 私が手放した「お金の呪い」の話
なぜかお金に追われ、心が休まらない…。その原因は親から受け継いだ「お金の呪い」かも。本田健氏の著書『子どもに教えたい「お金の知恵」』をきっかけに、価値観の鎖を断ち切り、「心の余裕」と本当の豊かさに気づくまでの物語を綴ります。
お金の話を、正面から
「お金」と聞いたとき、あなたの心はどちらに動きますか。ワクワクに向かいますか。それとも、ざわつきますか。
私はずっと「ざわつき」の側でした。
この本を手に取ったのは、子どもたちにお金で苦労してほしくない、という親心からでした。でもページをめくるうちに気づきました。これは子どものためだけの本じゃない。まず私自身が、真正面から向き合うべきテーマだと。

父のため息と、母の愚痴
私の父は大きな組織に勤める、世間的には「堅実」な人でした。でも毎朝、深いため息をついて家を出ていきました。子どもながらに分かりました。仕事とは、家族のために我慢してやる「つらいこと」なのだ、と。
母はお金の話になると愚痴をこぼしていました。高校の塾代はアルバイトで稼ぎ、大学は奨学金で通いました。「離婚したくても、生活のことを考えるとできないのよ」という言葉を、何度聞いたかわかりません。
父は晩年、投資詐欺に遭いました。両親は日本人の平均寿命よりずっと早く、相次いでこの世を去りました。最後までお金の心配から解放されることのない人生でした。
その背中を見て育った私は、いつしかこんな言葉をお守りのように抱きしめていました。
「お金を知らないのは、人生最大のリスクだ」「女性も一人で生きていける経済力を持たなければ」——それは自分を守るための鎧であり、未来を切り拓くための剣でした。
底の抜けたバケツ
大学生のころから経済雑誌を読み、積立投資をはじめました。社会人になると社会保障の仕組みを勉強し、日経新聞を購読し、ファイナンシャルプランナーの資格を取りました。「お金のIQ」を高めることに、ずっと必死でした。
おかげで、地方移住で収入が激減したときも、コロナ禍でフリーランスの仕事が揺れたときも、なんとか溺れずにやってこられた。それは事実です。
でも、心のどこかにいつも焦燥感がありました。どれだけ水を注いでも満たされない、底の抜けたバケツを抱えて走っているような感覚。その正体が何なのか、長い間わかりませんでした。
「お金のEQ」という視点
この本が教えてくれたのは、その答えでした。「お金のEQ」という考え方です。
私のお金にまつわる感情は、いつも「不安」と「恐れ」がスタート地点でした。「まだ足りない」「頼れるのは自分だけ」——そういう強迫観念が、気づかないうちに心の戦闘モードを解除させずにいたのです。
本書はこう問いかけてきます。豊かさやチャンスは、獲得するのではなく「受け取る」もの。今あるものに感謝し、人と分かち合うことで、豊かさはもっと巡り始める、と。
最初は正直、キレイゴトに聞こえました。でも試しに「今あるもの」を一つひとつ数えてみました。雨風をしのげる家がある。家族は健康だ。学べる仕事がある——そのひとつひとつに「ありがとう」と感じてみたとき、張り詰めていた心の糸がふっと緩みました。
スペースができると、焦っているときには見えなかったものが見えてきます。人の優しさ、日常に隠れた小さなチャンス。バケツの底が抜けていたのは、お金が足りなかったからではありませんでした。受け皿が、なかったのです。
バトンは、自分で選べる
本を読み終えて、子どもに聞いてみました。「お金って、どんなイメージ?」
返ってきたのは「えー? 楽しいもの!」という言葉でした。
私と夫が仕事をしている様子をどう思うか聞くと「楽しそう。ラクそう!」とのこと。「ラクそう」にはツッコみましたが(笑)、少なくともお金や仕事に対して重たい感情を持っていないことに、安堵しました。
私が両親から受け取ってしまった、重くて冷たいバトン。それを次の世代に渡さずに済みそうです。
過去を癒し、価値観の鎖を断ち切ること。それは誰にでもできます。気づいた瞬間から、始められます。
お金と向き合うことは、自分の人生と向き合うことです。どう稼ぐかを考えることは、どう生きたいかを考えることです。この本はその問いへの、静かで誠実なコンパスになってくれました。
【もっと知りたいあなたへ贈る4冊】
お金や社会の仕組みを、もっと深く、もっと楽しく知りたい!と思ったあなたへ、私がこれまでに読んだ本の中から、とっておきをご紹介します。
- 『父が娘に語る美しく深く壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』
「なぜアフリカは発展せず、ヨーロッパが発展したのか?」その答えは、優劣の話じゃない。世界の不平等の根源を、父が娘に語りかける形で解き明かす一冊。知的好奇心がビリビリと刺激されます。 - 『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』
昨年、惜しまれつつ亡くなった経済評論家・山崎元さんからのラストメッセージ。その現実的で地に足のついた投資スタイルはもちろん、息子さんへの深い愛情が胸を打つ、温かい本です。 - 『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』
お金の仕組みを、感動的な物語を通して学べる一冊。読み終わる頃には、社会の見え方がガラリと変わっているはず。いい話です。泣けます。 - 『金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』
言わずと知れた、世界的なベストセラー。前の3冊とは毛色が違いますが、ぜひ手に取ってみてほしい。私はこの本を読んで「資産」という言葉の本当の意味を知り、働き方に対する考え方が180度変わりました。
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