あなたを縛る価値観の正体は? 私が手放した「お金の呪い」の話

なぜかお金に追われ、心が休まらない…。その原因は親から受け継いだ「お金の呪い」かも。本田健氏の著書『子どもに教えたい「お金の知恵」』をきっかけに、価値観の鎖を断ち切り、「心の余裕」と本当の豊かさに気づくまでの物語を綴ります。

あなたを縛る価値観の正体は? 私が手放した「お金の呪い」の話

のりーです。

突然ですが、あなたにとって「お金」は、どんな顔をしていますか?

夢を叶える魔法の杖?

それとも、心の奥をざわつかせる悩みのタネ?

人前で話すのは、少し勇気がいる。けれど、私たちの人生とは切っても切れない関係にある、お金。そのつかみどころのない存在に、私たちは知らず知らずのうちに心を揺さぶられ、人生の舵取りを任せてしまっているのかもしれません。

今週のBookPickは、そんなお金との付き合い方、そして「私らしい生き方」を見つめ直すためのコンパスになる一冊。本田健著『子どもに教えたい「お金の知恵」』をお届けします。

📕今週のテーマ BookPick:お金という「鏡」

『子どもに教えたい「お金の知恵」』(本田健)書影。お金の教育/マネーリテラシー入門、47のルール、才能を伸ばすための実践的ガイド。PHP、税込560円。
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この本を手に取ったのは、ごくありふれた親心からでした。子どもたちに、お金で苦労してほしくない。そのための「知恵」をどう伝えればいいんだろう、と。

でも、ページをめくるたびに気づかされました。

これは子どものため「だけ」じゃない。まず、この私自身が真正面から向き合うべきテーマなのだ、と。

特にずしりと響いた一節があります。

親がお金に対して健康的に付き合っているかどうかが子どもに受け継がれる

ドキリ、としました。

まるで、見えないバトンリレーのように。お金に対する価値観や感情が、世代を超えて手渡されていく。もし、親がお金に振り回される人生を送っていたら? 子どもは無意識のうちに「安定」や「安全」という名のシェルターに閉じこもり、肝心なときに一歩を踏み出せなくなるかもしれない、と。

その言葉は、私の心の奥底に眠っていた古いアルバムを開く呪文になりました。

父のため息と、母の愚痴

私の父は大組織に勤める、世間的に見れば「堅実」な人でした。

しかし、彼は毎朝「はぁぁぁ」と、深いため息をついて職場へ向かっていました。子どもの私にも分かりました。仕事は、家族のために我慢してやる「つらいこと」なのだ、と。

そして物心ついた頃からは、母の愚痴を聞いて育ちました。

「お父さんはお金の使い方が下手だから」
「お金がないから、美容院に行けないの」

高校生のとき、塾に通うためのお金はアルバイトで稼ぎました。大学時代は奨学金を借りました。母はよくため息混じりにこう言っていました。

「離婚したくても、生活のことを考えると、できないのよ」。

父は晩年、うまい投資話に乗って詐欺に遭ったそうです。そして両親は日本人の平均寿命よりも、ずっと、ずっと早く、相次いでこの世を去りました。最後までお金の心配から解放されることはなかったように見えます。そんな家庭環境で育った私はいつしかこんな観念をお守りのように、固く固く抱きしめるようになっていました。

「お金を知らないのは、人生最大のリスクだ」
「女性も一人で生きていける経済力を持たなければ」
「そのためには、堅い仕事に就き、学び続けなければ」

それは、自分を守るための分厚い鎧であり、未来を切り拓くための剣でした。働くことは、収入を得て「自由」を手に入れるための戦い。だから、仕事をしないなんてありえない。それは、自由を明け渡す「降伏」を意味するから。

私を守ってくれたお金のIQという鎧

大学生になった私は、経済雑誌を読み、金の積立と投資信託をスタート。社会人になると、給与明細の社会保険料控除額にぎょっとして、社会保障の仕組みを勉強しました。日経新聞を購読し、ボーナスで個別株デビュー。気づけば、ファイナンシャルプランナーの資格を取っていました。

そうやって、「お金のIQ」を高めてきたのです。

おかげで、地方移住で収入が激減したときも、コロナ禍でフリーランスの仕事が波にのまれたときも、なんとか溺れずにやってこれた。それは、紛れもない事実です。

でも。心のどこかで、何かに追い立てられているような焦燥感を常に感じていました。どれだけ水を注いでも決して満たされることのない、底の抜けたバケツを抱えて走っているような感覚。その正体が何なのか、長い間、分からずにいたのです。

「ありがとう」がもたらす本当の価値

『子どもに教えたい「お金の知恵」』は、バケツの底が抜けていた理由をそっと、でもはっきりと教えてくれました。それが、「お金のEQ」という視点でした。

お金を扱うとき、あなたの心はどれだけ平安ですか?

豊かさやチャンスは、獲得するのではなく「受け取る」ものですよ。そして、今あるものに感謝し、人と「分ち合う」ことで、豊かさはもっと巡り始めますよ、と。

正直、戸惑いました。感謝や分かち合いなんて、スピリチュアルで現実離れしたキレイゴトだと思っていたから。でも、違ったんです。

私のお金にまつわる感情は、いつも「不安」と「恐れ」がスタート地点でした。両親の不和、お金をめぐる争い、将来への悲観。そういった過去の体験が、「世の中は信頼できない」「頼れるのは自分だけ」という、一種の強迫観念を深く刻みつけていたのです。

私はいつも「まだまだ足りない」と自分自身を追い立てていました。心はいつも戦闘モードで、息つく暇もなかったんです。

でも、この本を読んで「今あるもの」を数えてみました。雨風をしのげる家がある。家族はみんな健康。多くの学びを得られる仕事がある。ひとつひとつに「ありがとう」と感じてみたとき、張り詰めていた心の糸が、ふっと緩むのを感じました。

そこに生まれたのが、ほんの少しの「心の余裕」です。

スペースができたことで、「あれが足りない」と焦っているときには見えなかった、人の優しさや、日常に隠れた小さなチャンスに気づけるようになった気がしています。

豊かさの流れは、お金やモノを必死で追いかけることではなく、まず自分の心に余裕という名の「受け皿」を作ってあげることから始まる。それは、私にとって大きな、そしてとても大事な発見でした。

そして、バトンは受け継がれる

本を読み終えて、子どもに聞いてみました。

「ねぇ、お金ってどんなイメージ?」

返ってきたのは、想像もしなかった言葉でした。

「えー? 楽しいもの!」

さらに、私と夫が仕事をしている様子をどう思うか尋ねると、

「楽しそう! それに、ラクそう!」

「ラクそう」には、思わず「おいおい」とツッコミを入れましたが(笑)、少なくとも彼らが仕事やお金に対して、重たい感情を抱いていないことに、安堵しました。

普段は質素な暮らしをしている我が家ですが、年に数回、「体験」のためにパッとお金を使う、と決めています。今年の夏は、家族で台湾と沖縄を旅しました。おいしいものを頬張り、きれいな景色を見て、現地の人とおしゃべりした時間。これまでの「楽しかった!」という温かい記憶が、子どもたちの心にお金に対するポジティブなイメージを育んでくれていたのかもしれません。

私が両親から受け取ってしまった、重くて冷たいバトン。

私はそれを自分の子どもたちに渡さずに済みそうです。過去を癒し、鎖を断ち切る方法を知ったから。それは、私にとって、豊かに生きるための「自由の切符」を手に入れたような感覚でした。

お金と向き合うことは、自分の人生と向き合うこと。
どう稼ぐかを考えることは、どう生きたいかを考えること。

この本はお金という鏡を通して、自分自身の過去、現在、そして未来を旅するための、最高のコンパスになってくれるはずです。

💪リデザインのためのアクション

1.あなたのお金にまつわる「感情」を書き出してみよう
子どもの頃の記憶、嬉しかったこと、悲しかったこと。お金を使うとき、どんな気持ち? ワクワク、それともザワザワ? まずは自分の心の現在地を知ることから。

2.あなたのお金は、誰の「ありがとう」?
今日使ったお金が、誰の仕事につながっているか想像してみませんか。コンビニで買ったコーヒーも、農家の人やお店の人の働きへの「ありがとう」。逆に給料は、あなたが誰かを喜ばせた「ありがとう」のしるしです。お金の流れを「感謝の交換」として捉えてみると、世界が少し温かく見えてきます。

3.「幸せなお金持ち」ごっこをしてみる
もし、お金の心配がなかったら、今日一日をどう過ごす? 「最高に豊かな人なら、どんな表情で、どんな言葉を使い、何を選ぶ?」と想像して行動してみる。心のあり方が、現実を変える第一歩です。

【もっと知りたいあなたへ贈る4冊】

お金や社会の仕組みを、もっと深く、もっと楽しく知りたい!と思ったあなたへ、私がこれまでに読んだ本の中から、とっておきをご紹介します。