偶然を必然に変える:地方移住を実現させた準備の技術
あなたにも、何か心の内で温めている「憧れ」はありますか? もしかすると、漠然としていて、どうすれば良いか分からずにいる方もいらっしゃるかもしれませんね。

「憧れ」を「現実」に変えるには、長期的な準備と柔軟な決断力が必要です。東京から小豆島→天草への移住を実現した筆者の夫・筒井洋充の10年の軌跡から、夢を具体化するためのヒントと、その第一歩を踏み出すためのアクションプランをお届けします。
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東京生まれ東京育ちの私にとって、地方での暮らしは憧れだった。子どもの頃、友人たちが盆や正月になると実家に帰省する様子を見るたびに、自分にはそんな「帰る場所」がないことを寂しく感じていたものだ。
2000年代初頭、インターネットが普及し始めた頃から、地方での暮らしに関する情報を集め始めた。しかし、当時はまだネット上の情報も限られており、地方での生活を具体的にイメージすることは難しかった。
漠然とした憧れが具体的な行動へと変わっていったのは、35歳を過ぎた頃のこと。「定年のない仕事がしたい」と思い始めた頃だ。最初に目を向けたのは、東京近郊での就農だった。インターネットで見つけた有機農家での体験や、NPOが主催する農業関連のプロジェクトに参加するようになった。
実際に土に触れ、作物を育てる経験を通じて、「農業は嫌いではない」という感触を得た。この「好きかどうか」より「嫌ではない」という感覚を大切にしたことが、後の選択に大きな影響を与えることになる。
転機となったのは、ある本との出会いだ。週休3日で果樹農園を営む農家の暮らしを紹介した本を読み、「農業は作物によって働き方が変わる」という新たな視点を得た。野菜栽培とは異なり、果樹栽培は比較的作業に余裕があり、加工品の製造販売など、複合的な経営も可能だ。この発見を機に、神奈川県の「オレンジホームファーマー制度」に参加し、柑橘類の栽培技術を学び始めた。