人生は計画通りにいかない。だから、「ゆるい縁」が最強の武器になる

ツテもコネもない元会社員が、どうやって移住先の農地と家を見つけたのか。人生を変えたのは、ネット検索では見つからない「ゆるいつながり」でした。

人生は計画通りにいかない。だから、「ゆるい縁」が最強の武器になる

夫が脱サラして飛び込んだ、農業という未知の世界。香川の小豆島で理想と現実の壁にぶつかり、ようやく見つけた次なる希望の地、熊本・天草。しかし、その契約を結ぶ直前に、あの熊本地震が… 。

ツテも、コネも、何もない。そんな私たちが、どうやってこの地に根を下ろし、畑と家を見つけることができたのか。今回は、ネット検索だけでは決して見つからない、「縁」の紡ぎ方についての実践録です。

<目次>

📝突然の揺れ。天災が、覚悟を固めさせた

2016年4月16日の早朝。熊本で再び大きな地震があったというニュースを、私は小豆島の自宅で聞いた。その日は、天草の農地の持ち主と会う約束の日。岡山から新幹線で熊本へ向かうはずが、九州新幹線は運行を見合わせていた。

万事休すか。いや、まだ手はある。

すぐに頭を切り替え、福岡空港から天草へ飛ぶルートを探した。幸運にも飛行機は飛んでおり、即断即決が功を奏して席を確保できた。

天草空港に降り立ったものの、そこから目的地までは40分以上。車がなければ身動きがとれない。そんな私を救ってくれたのが、小豆島での出会いをきっかけに知り合った市役所の担当者だった。彼は自分の車で、農地から空き家の候補まで、丸一日かけて案内してくれたのだ。

農地を貸してくれることになったSさんは、定年後に農業を始めたものの、70歳を過ぎた頃から体が思うように動かなくなったと話してくれた。

後を継ぐ子どもはおらず、「あんたみたいな人が現れんかったら、このみかん山も、自分でぜんぶ木を切って終いにするつもりやった」と静かに語った。