指先でなぞる「情報」と、ペンで刻む「思考」の決定的な違い。AI時代に私たちが「書く」を捨ててはいけない理由
「学校からタブレットが配られたけれど、子供の学力は本当に上がっているの?」 「ペーパーレス化を進めたけれど、なんだか会議の質が落ちた気がする……」
現場で感じる「ICT活用」の拭いきれない違和感
「学校からタブレットが配られたけれど、子供の学力は本当に上がっているの?」 「ペーパーレス化を進めたけれど、なんだか会議の質が落ちた気がする……」
こうした疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。実は、私自身も日々この問いと向き合っています。私はこれまで小中学校でICT支援員を務め、現在は小学校の教育業務支援員として、ICTが教室に溶け込んでいく最前線に立っています。
しかし、現場で見る限り、状況はかなり「心許ない」と言わざるを得ません。デバイスは配られた。操作も覚えた。それなのに、学びの深まりや思考の躍動感が、道具の進化に追いついていない感覚があるのです。
「一体、私たちは何に焦点を当てるべきなのか?」
日々悩み、模索する中で、オードリー・タン氏のインタビュー本の中に、改めて追求すべき大きなヒントを見つけました。それは、デジタル全盛の今だからこそ問い直すべき、「ペン(手書き)」という身体性の重要性でした。
「なぜ今、これが問題なのか」 ― 消費する指、思考するペン
デジタルデバイスの操作は、年々「直感的」になっています。指でタップし、スワイプする。この摩擦のない操作感は、情報の「検索」や「閲覧」には最適です。しかし、そこには教育現場でもビジネスでも見過ごせない落とし穴があります。
「指」は情報を単に消費するための道具になりやすく、「ペン」は概念を構築するための道具になる、という点です。
オードリー・タン氏は、手書きの速度が「人間の思考の速度」に最も近いと説いています。デジタルの光速に対して、あえて「ペン」という不自由なアナログの速度を介在させることで、脳の中に「反芻(はんすう)」と「理解」の余白が生まれるのです。指先で画面を弾くスピードは速すぎます。速すぎるから、思考が定着する前に次の情報へ流されてしまうのです。
これを裏付ける重要な科学的根拠を、あえてここで明記しておきたいと思います。
- Mueller & Oppenheimer (2014) "The Pen Is Mightier Than the Keyboard" プリンストン大学らの研究:講義をキーボードでタイピングして記録した学生よりも、手書きでノートを取った学生の方が、概念的な理解において有意に高いスコアを記録しました。タイピングは「逐語記録(コピー)」になりがちですが、手書きは「情報の再構成」を脳に強いるためです。
- 東京大学・酒井邦嘉教授らの研究 (2021): 紙の手帳とスマホでの記憶定着を比較。手書きによる「場所」や「筆圧」といった身体的情報の付随が、記憶に関わる脳領域(海馬など)の活性化を助けることが証明されています。
AIに指示を出す「言語化の力」を養うためにも、まずはペンを使って自分の内側を深く耕すプロセスが不可欠なのです。
「事例から学ぶヒント」 ― スタイラスペン120%活用術とロイロノート
では、現場でどのようにデジタルと「ペン」を融合させるべきか。 日本の教育現場で圧倒的な支持を得ている「ロイロノート・スクール」の活用シーンには、その答えが詰まっています。子供たちがカードにペンで書き込み、それを線で繋いでいく。この「思考の見える化」こそが、単なるタブレット操作を「学び」に変える瞬間です。
大人の私たちも、タブレット付属のスタイラスペンを「ただのポインティングデバイス」として使うのは卒業しましょう。今日から使える「スタイラスペン120%活用ハック」を提案します。
- 「ぐちゃぐちゃ思考」の可視化ハック
会議メモやアイデア出しの際、きれいな文字を書こうとしないでください。ロイロノートのような自由度の高いキャンバスを使い、単語を書き殴り、ペンでぐるぐると囲ったり、矢印で強引に繋いだりします。この「非定型な線の動き」が、脳内のバラバラな経験を結合させ、新しいアイデアを生みます。 - 「感情のレイヤー」加筆ハック
共有されたPDF資料に、スタイラスペンで直接「ここ重要!」「面白い!」と手書きのメモを入れます。デジタルフォントには決して宿らない「送り手の体温」が乗ることで、資料は「ただのデータ」から「生きた知識」へと昇華されます。 - 「AI共創」のリアルタイム図解ハック
画面を分割(スプリットビュー)し、片方でAIと対話しながら、もう片方のノートにスタイラスペンでAIの回答を「図解」していきます。AIの言葉を自分のペンで「絵」に変換するプロセスを挟むことで、情報の主導権を自分の手に取り戻すことができます。
メインコラム 3:「Techてく歩く連載漫画」
今月のテーマ:は「小さな会社の大きな挑戦|第4巻:壁を越える勇気」です。
【あらすじ】更なる業務効率化を目指す浩は、より高度なDXに挑戦しようとするが、費用の問題や、複雑な設定に直面し、一度は挫折しそうになる。
おすすめSaaS/ツール:Guest Note(ゲストノート)
「効率化」の先に「温かみ」を残す。それを宿泊業の最前線で体現しているのが、オンラインチェックインツール「Guest Note(guest-note.jp)」です。
- ここがいい:
宿泊名簿の記入という事務作業をデジタル化するツールですが、特筆すべきは「お客様の負担」と「スタッフの負担」を同時に減らしつつ、丁寧な接客の時間を創出する点にあります。
日本語に加えて、英中韓の4ヶ国語に対応していることもGoogleフォームで自作するのとは違うメリットだと思っています。
私は旅館業法での運営ですが、民泊新法での運営事業者さんの方がよりメリットがありそうです。 - 「天草農工房ふぁおの宿」での実践:
私の宿でも、このGuest Noteを導入し、「チェックインの無人化・省力化」を進めます。 事務作業をテクノロジーに任せ、浮いた時間でお客様一人ひとりに寄り添った「おもてなしの構想」を練る。
もし、お客様がタブレットで入力する際にも、スタイラスペンを使うことができれば、まるで宿帳に署名するような「旅の情緒」を壊さずに済みます。
コードを使うとPro版の無料トライアル期間が60日間に延長になるそうです。つまり2か月無料ですね。
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リデザインのためのアクション
- 「指」を止めて「ペン」を握る:今日1日、何かを判断する前に、必ず1分間だけペンを持って白紙に図を描いてみてください。
- ロイロノート的思考を日常に:バラバラなアイデアを、デジタル上で「カード」として書き出し、手書きの線で繋ぐ練習をしてみましょう。(パワポやホワイトボード系アプリでも代用できます)
- 「省力化」の目的を再定義する:Guest Noteのように事務作業を自動化した後、あなたはその「空いた時間」を使って、誰にどんな価値を届けたいですか?
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